一般酒類小売業免許の要件

一般小売免許は、一般消費者に酒類を販売する場合や、飲食店に酒類を販売する場合に必要となる免許です。このページでは、一般小売免許の要件についてまとめてみたいと思います。

ちなみに、今回の案件の概要は次のとおりです。
※守秘義務の観点から、一部内容を改変してあります。

  • 申請者は株式会社で複数期を経ている
  • 役員は取締役5名(監査役は非設置)
  • 現在のメイン業務は喫茶店・居酒屋の経営
  • 売り先は主として飲食店(「業務用卸主体店」)
  • 社内に酒販売の経験者はいない
  • 申請販売場はビルの1階のテナント物件(他の法人も入居している)

ということで、酒類販売業免許のうち「一般酒類小売業免許」の取得が必要となります。

2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象とする通販を行う場合は、別途「通信販売酒類小売業免許」を取得する必要があります。

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人的要件(酒税法10条1号〜8号)

申請者やその役員が、酒税法等で過去に不利益処分を受けていないこと、過去に税の滞納がないこと、過去に一定の法令がないこと、などを依頼者に聞き取り確認します。

以下、根拠条文の抜粋です。関係する部分のみ抜き出し要約しています。

酒税法第10条
酒類の販売業免許の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、税務署長は、酒類の販売業免許を与えないことができる。

  • 1 免許申請者が酒類販売業免許を取り消されたことがある者 or アルコール事業法の規定により許可を取り消されたことがある者である場合
  • 2 酒類販売業免許を受けた法人が酒類販売業免許を取り消された場合又はアルコール事業法の許可を受けた法人が許可を取り消された場合において、それぞれ、その取消しの原因となつた事実があった日以前1年内に当該法人の業務を執行する役員であった者で当該法人がその取消処分を受けた日から3年を経過するまでのものが酒類販売業免許を申請した場合
  • 3 免許申請者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人、被保佐人若しくは被補助人であって、その法定代理人が前2号又は第7号から第8号までに規定する者である場合
  • 4 免許申請者又は前号に規定する法定代理人が法人であって、その役員のうちに第1号、第2号又は第7号から第8号までに規定する者がある場合
  • 5 免許申請者が第1号、第2号又は第7号から第8号までに規定する者を当該申請に係る販売場に係る支配人としようとする場合
  • 6 免許申請者が当該申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合
  • 7 免許申請者が国税若しくは地方税に関する法令、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律若しくはアルコール事業法の規定により罰金の刑に処せられ、又は国税犯則取締法若しくは関税法及び特別とん税法の規定により通告処分(科料に相当する金額に係る通告処分を除く。)を受け、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなつた日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過するまでの者である場合
  • 7の2 免許申請者が未成年者飲酒禁止法の規定、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定により、又は刑法の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から3年を経過するまでの者である場合
  • 8 免許申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わつた日又は執行を受けることがなくなつた日から3年を経過するまでの者である場合

他の許認可でも類似の欠格要件を見かけますが、こういった法令違反等に引っかかるケースは今までのところ経験がないです。とはいえ、しっかり確認しておきたいものです。

それと、これは免許後の手続きとなりますが「酒類販売管理者」を選任する必要があります。管理者になるのに特別な資格は不要ですが、選任後3箇月以内+3年に1回の講習会受講が努力義務となっています。

法改正により、平成29年6月1日から、酒類販売管理研修を免許を受ける前に受講しなければならなくなりました。具体的には「過去3年以内に酒類販売管理研修を受講した人を酒類販売管理者に選任」する必要があります。また、研修の初回受講後も、3年を超えない期間ごとに定期研修を受講する必要があります。

今回の案件では、代表取締役が酒類販売管理者になる予定でしたので、講習会は免許申請前に受けていただきました。講習会はそんなに頻繁に開催されるわけではなく、申込も先着順とのことでしたので、早めに申し込んで受講していただいた次第です。

講習会の実施スケジュール(国税庁HPへ)

ちなみに、依頼者の地域の講習会には次の要領で申し込みました。

  1. 講習会実施者に電話で申込の意思を伝える
  2. 実施者からファックスで申込書が届く
  3. 所定の事項(社名、氏名、住所等)を記載し、ファックスで申込
  4. 実施団体より受講票が郵送される
  5. 受講料は5,000円
  6. 講習時間は3時間

場所的要件(酒税法10条9号)

早速根拠条文を見てみます。

酒税法第10条
酒類の販売業免許の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、税務署長は、酒類の販売業免許を与えないことができる。

  • 9 正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に製造場又は販売場を設けようとする場合

「取締上不適当な場所」ってどんな場所でしょうか。これは手引きに書いてあります。

手引によると、

  1. 製造免許を受けている酒類の製造場や販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場又は料理店等と同一の場所でないこと
  2. 申請販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていること

が要求されています。この要求を満たさない場所が「不適当」なのですね。

今回の案件では、経営している居酒屋とは別のテナントを販売場とするので、1.についてはクリアできます。

ただ、テナント内に申請者の親族が経営する別法人が入居していますので、2.に基き明確に区分する必要があります。この点については申請者にも十分理解していただき、対応していただく必要があります。もちろん、図面でもしっかり示していきます。

経営基礎要件(酒税法10条10号)

どんどんチェックを進めていきます。

酒税法第10条
酒類の販売業免許の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、税務署長は、酒類の販売業免許を与えないことができる。

  • 10 酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合

具体的には、次の点に該当しないかどうかの確認を行います。

  1. 現に国税・地方税を滞納している
    →県・市の税証明を取得し確認します。(申請にも添付します。)
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている
    →聞き取りで確認。
  3. 最終事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が、資本等の額を上回っている
    →決算書類をお借りして確認。
  4. 最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度で、資本等の額の20%を超える欠損が生じている
    →決算書類をお借りして確認。
  5. 酒税に関係のある法律に違反し、通告処分を受け、履行していない場合又は告発されている
    →聞き取りで確認。
  6. 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却若しくは移転を命じられている場合
    →聞き取りで確認。
  7. 申請酒類小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる
    →管理者の選任やどのような体制で酒類販売を行っていくか打ち合わせます。
  8. 経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であること
    →基本的に酒販売の従事経験が3年以上あればOKなのですが、今回のケースでは未経験者となります。後日税務署に確認です。
  9. 酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設及び設備を有していること、又は必要な資金を有し免許を付与するまでに販売施設及び設備を有することが確実と認められること
    →販売計画を作りながら、設備・資金を割り出していきます。

次で最後です。

受給調整要件(酒税法10条10号)

酒税法第10条
酒類の販売業免許の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、税務署長は、酒類の販売業免許を与えないことができる。

  • 11 酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合

これについては、手引に次の記載があります。

具体的には、申請者が(中略)酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないことが必要となります。

ということで、酒類を提供する飲食店経営を行っている場合、需給調整要件に引っかかってしまうため、原則として酒類販売業免許が取れないこととなります。

ただ例外として、手引に次の記載があります。

  1. 接客業者であっても国税局長において販売業免許を付与することについて支障がないと認めた場合には、免許を受けることができます。
  2. 1の場合であって、例えば、同一の営業主体が飲食店と酒販店を兼業する場合(中略)飲食店で提供される酒類と酒販店で販売される酒類が、仕入先等を含め混合されることがないよう、飲食店部分と酒販店部分との場所的区分のほか、飲用の酒類と酒販用の酒類の仕入・売上・在庫管理が明確に区分され、それが帳簿により確認できる等の措置がなされる必要があります。

ということで、例外的に免許を受けることができる道があります。より具体的な点については税務署に確認したいと思います。

なぜ居酒屋等を経営している場合に原則として免許が取れないのかと言いますと、酒の小売りをする場合、小売り用の酒は業者から卸売価格で仕入れることができるようになります。居酒屋が仕入れる仕入れ価格よりも、小売りの卸売価格の方が安いんですね。そこで、卸売価格で仕入れた酒を居酒屋の方に回してしまえば、他の一般的な居酒屋よりも酒の仕入れコストを抑えることができてしまい、不当に競争力を得ることとなってしまいます。このような状況を避けるための方策が「需給調整」ということになります。

税務署への事前相談

ひととおり要件をチェックし、確認すべき事項をお客さんと打ち合わせたので、税務署にアポを取って担当官に相談しに行ってきました。

税務署の酒税担当は「酒類指導官部門」と呼ばれています。

行政書士が税務署に手続きに行くというのは少し違和感がありますが、酒の免許申請についてはまったく問題なく、行政書士の業務です。堂々と行ってきましょう。

今回確認したかったのは、次の2点です。ざっと下書きした書類も持参のうえ、指導を仰いできました。

  1. 酒販売の従事経験が全くないが、経営基礎要件についてはどう考えれば良いのか?
  2. 飲食店経営者が酒販売免許を受けることができる場合があるのか?
  3. 申請販売場内に区画を分けて他の法人が入居しているが、区画割りについて注意点はあるか?

酒販売の従事経験が全くないが、経営基礎要件についてはどう考えれば良いのか?

今回のケースでは代表取締役が3年以上の飲食店経営の経験があったため、酒販の経験がなくても経営基礎要件的には問題ないということでした。

飲食店経営者が酒販売免許を受けることができる場合があるのか?

下記の措置が採られていれば、基本的に免許は付与する方向だとのことでした。

  • 酒販店で販売する酒と、飲食店で提供する酒について、仕入先を分けること(分けることが難しい場合は、酒販店用は卸売部門から、飲食店用は小売部門から仕入れること)
  • 酒販店で販売する酒と飲食店で提供する酒のそれぞれについて、受け入れ・払い出しを帳簿で管理すること(飲食店で提供する酒についての記帳は、もともと酒税法上の義務ですね)
  • 酒販売専用のレジを設けること

打ち合わせの結果、仕入・売上・在庫管理をどのように区分するのか書類にまとめ、誓約書として提出することとしました。

申請販売場内に区画を分けて他の法人が入居しているが、区画割りについて注意点はあるか?

パーティションで明確に区切るという方針を図面をお示しして説明し、OKをいただきました。

以上のとおり税務署にて事前相談を行い、免許が取れる可能性がある、ということが分かりました。

打ち合わせの結果をお客さんに説明し、書類の仕上げ作業に入っていきます。

要件のご説明は以上となります。引き続き、次のページで「書類作成・申請・補正・免許交付」についてご説明いたします。

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