専用の事務所を借りた方がいいの?

事務所を借りた方がいいのか、自宅で十分なのか、これから開業される方は大いに悩まれることと思います。

私は実家で3年、賃貸事務所で4年、そして自宅兼事務所で2年ちょっと行政書士事務所をやってきました。

それぞれでどのようなメリット・デメリットがあったか、記してみたいと思います。

目次

  1. 実家事務所
  2. 賃貸事務所
  3. 自宅兼事務所
  4. 結論

1.実家事務所

私の行政書士事務所は、実家からスタートしました。
実家がある集落は、周りを田畑に囲まれ「陸の孤島」と呼ばれているような地域です。

妻曰く「トトロがいそう」なのだそうです。

開業当初は内容証明をHPから受注したいと考えていましたので、事務所の場所は関係ないと思いました。

実際に、HPで受注し電話やメールでのやり取りで業務が完結できたので、確かに事務所の場所は集客には影響なかったと思います。

(もっとも、当時はまったく食えていませんでしたが・・・。)

その後、会社法が施行されると同時に主要業務を会社設立に切り替えました。

会社設立をやり始めてからも、こちらからお客さんの所に出向くという形で特に問題ありませんでした。私の事務所が自宅事務所であることを理由に、仕事を断られたことは一度もありません。会社を設立するお客さんも、だいたいが自宅事務所ですからね。

打ち合わせは、お客さん自宅や設立予定の事務所に出向いて行う形となります。たまにファミレスや喫茶店で打ち合わせをすることもありました。

ただ、お客さんの所まで片道2,30kmなんてこともありましたので、移動時間(車)が馬鹿になりませんでした。愛読している栢野克己さんの書籍に、

  • 移動時間は1円にもならない
  • 移動時間をたくさん使ってあちこち動き回っていると「仕事をした気分になる」

と書かれていて、気になり始めていました。もちろん、移動時間はビジネス教材を聴くなどし、無駄にしないように心がけていました。

「もし移動時間を無くすことができれば、もっともっと仕事ができる」という思いが日に日に強くなっていきました。会社設立業務もポツポツ入ってきていたので、「金銭的にも借りられなくはない」という状況でした。

2.賃貸事務所

よく通る道路沿いに、前から気になっている賃貸物件がありました。通りがかりに覗いてみると、服屋さんとして使われていた物件のようで、スポットライトや試着室などが見えました。

こんな所を自分の事務所にできたら「行政書士事務所っぽくない雰囲気でいいなあ」と思っていました。

意を決して不動産会社にアポを取り、相談に行ってみました。

不動産屋さんは1人で経営している小さな会社でした。そして、当初6万円と言われていた家賃を「堅い仕事で使うのなら安心できるので5万円でいいですよ」と値下げしてくださいました。

もちろん私は即決。念願の自分の事務所を借りることができました。

「これで堂々とお客さんに来てもらえる」

なぜか自信がみなぎってくるように感じられました。

また、自宅事務所と違って「出勤」するというステップが加わったことで、日々の生活にメリハリがつくようになりました。(とは言っても、朝8時出所・夜10時〜11時くらいに退所という仕事中心の日々ですが・・・。)

仕事の方は、予想どおり格段にやりやすくなりました。ご来所いただく形に変えたので、出歩く時間が少なくなり、仕事に集中できるようになりました。

売上の方も、自宅事務所時代から大きく伸ばすことができ、少し余裕もできました。

でも、段々と仕事に関係ない人々も来所するようになりました。通りに面した事務所なので、事務所前を通ると「お、田舎書士がいるな!」というのが丸見えなのです。すると、想定外なことに「お茶飲みに来る同業者」が増えてきたのです。これには堪りませんでした(涙)。集中して書類作りをしなければならない時は、入り口に設置していたロールスクリーンを下げ、居留守を使うような状況でした。

もちろん、「今忙しいので」とお茶飲み客を断れば良いのでしょうが、同業者といっても人生の先輩ばかり。相手も悪気があって来るわけではなく、無下に断れなかったのです。

もう一つ、想定外のことがありました。

隣のテナントに入っている会社への来訪者が、私の事務所用の駐車場に平気で車を停めるのです。それに対して隣の会社が何ら配慮しないので、大家さんに苦情を言って、駐車スペースにネームプレートを設置してもらいました。

それでもなお無断駐車が続いたある日、とうとう事故が起こってしまいました。私のお客さんが駐車場に車を停めようとしたところ、隣の会社の来客者の車にぶつけてしまったのです。もちろんぶつけた方が悪いのですが、ぶつけた相手の車の停め方がいい加減で、やっと1台入るかどうかという狭いスペースしかなかったのです。

そんなこんなで、段々と現状が嫌になってきました。そんな折、妻の妊娠がわかりました。

3.自宅兼事務所

子供が生まれることがわかり、また事務所を自宅に戻すことにしました。(この頃の自宅は、最初に事務所として使っていた実家ではなく、賃貸アパートです。)

妻の近くで、できるだけ家のことを手伝いたいと思ったのです。それと、賃貸事務所にうんざりしきっていたことも自宅事務所に戻した理由です。

前者の方が建前で、後者が本音かもしれません。

内心、「ああ、これでまたお客さんを呼びづらくなるなあ」と思っていたのですが、それが自分にマイナスの暗示をかけてしまい、自宅事務所に戻した1年目は賃貸事務所だった前年から年商が100万円ほどダウンしてしまいました。

その結果、「やっぱり自宅だとダメなのかな」とさらに悪い循環で思考が進んでいきます。

そんな負の循環を断ち切ってくれたのは、子供の誕生でした。お金はいくらあっても余らない、という状況になったのです。

お客さんを呼びにくいと思うのであれば、呼ばなくてもいい形で仕事をすればよい。昔のように私から出向く形でもいい。

そしてこの時に私が採ったやり方は、既存のお客さんとの関係を深める、ということでした。

既存のお客さんであれば私の状況(子供が生まれたことや自宅事務所に戻したこと)を知ってますし、ある程度の信頼関係もできている(と私は思っている)ので、私がどこで仕事をしていようと関係ありません。

新規のお客さんから依頼を得ることと、既存のお客さんにリピーターになってもらうことを比較すると、後者の方が圧倒的に楽なのです。

こうして、既存のお客さんからいただく仕事を中心にし、時々いただく新規の案件には出張スタイルで対応していった結果、自宅事務所に戻した2年目は賃貸事務所時代と同じくらいの年商に戻りました。

ただ、賃貸事務所時代よりも経費がかなり少なくなったことで、利益は開業してから一番大きくなりました。

4.結論

結局、稼げないのは自宅事務所だからではなく、自宅事務所であることを自分で肩身がせまいように感じてしまい、自分に負の暗示をかけ、その暗示に従って消極的に行動しているからなのだと思います。

自宅に戻して3年目の今、人を雇うつもりもなく一人でやっていこうと思っている私には、「自宅事務所で十分」だと思っています。

自宅事務所は確かに色々な制約があると思いますが、制約があるからこそ工夫の余地があるのです。上を見たらキリがありません。今の自分の環境で売上をMAXにするにはどうすれば良いか、これからも考え実践していきたいと思います。

最後に、私の事務所よりももっと田舎で自宅事務所をやっている知人の行政書士さん、近所で自宅事務所の知人の税理士さんがいますが、お二人とも私よりも遥かに大きな成果を出していらっしゃいます。お二人とも、事務所を大きくするとか、賃貸事務所借りるとか、そういうお考えはないそうです。

自営業は自由です。何も無理して組織を作らずとも、雇用を創出せずとも、目の前のお客さんのために全力を尽くし、役に立って喜んでもらえれば、とりあえずそれでOKだと思っています。

私にとって、子供と触れ合う時間をたくさん持てることは何にも代えがたい幸せです。

そんなスタンスで行政書士事務所をやっていくのもアリなのです。

余談ですが・・・、最近お手伝いしているお客さんも、そんなスタイルの方が多いです。いつの間にか類が友を呼んだのでしょうか。

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