株式会社の新規設立

株式会社の新規設立について、設立の流れに沿ってご説明したいと思います。

以下では、事例として一番多い、発起設立・取締役会非設置・監査役非設置・現金出資のみを前提としています。他のケースはまた別のページにまとめたいと思います。

僕は一応、これまで3ケタの案件を経験させていただいたのですが、その中で学んだ「実務書には書いていないポイント」などもお話できればと思います。

目次

  1. 設立スケジュールの確認・決定
  2. 設立する会社の概要を検討
  3. 商号や事業目的の調査
  4. 個人実印・会社実印の準備
  5. 定款原案についての打ち合わせ
  6. 公証役場に提出する委任状への押印
  7. オンライン定款認証嘱託・定款認証
  8. 資本金の払い込み
  9. 各種書類の作成
  10. 司法書士さんとのやり取り
  11. 法務局への設立登記申請

1 設立スケジュールの確認・決定

お客さんから株式会社設立のご依頼が入ると、早速初回の打ち合わせを行っていきます。

「ゆっくりでいい」という案件は稀で、ほとんどが「最短最速で設立してほしい」というケースです。そこで、設立までのスケジュール確認を行います。

僕はオリジナルのスケジュール表と費用の案内を作成し、初回打ち合わせの際にお客さんにお渡しするようにしています。お互いに「今どの段階の作業を進めているのか」「いつまでに何をしなければならないのか」を確認することができ、便利で安心です。

ある案件で、お客さんとの間でスケジュールについて認識の違いが生じたことで、お客さんに怒られたことがあります。もちろんスケジュール表をお渡ししお客さんにも説明していたのですが、結果としてお客さんが怒ってしまったわけで、僕の説明の仕方が悪かったのだと思います。それ以来、とにかく丁寧に丁寧に、ご説明をするよう心がけています。見積もりを含め、説明資料の類をお客さんに渡さないで業務を進めている行政書士さんを見たことがあるのですが、僕のような目に遭わないように、面倒でも書類で確認するようにしていただくのがおすすめです。

2 設立する会社の概要を検討

スケジュールが決まったら、次は設立する会社の内容を詰めていきます。具体的には、次についてお客さんの相談に乗りながら決めていきます。

  1. 商号
  2. 本店所在地・支店所在地
  3. 事業目的
  4. 出資者・資本金・現物出資の有無
  5. 役員(取締役・代表取締役・監査役)
  6. 事業年度(決算月)

3 商号や事業目的の調査

商号と事業目的については、詳しく調査していきます。

3-1 商号調査

会社法以前はもっと細かい制限がありましたが、現在は、同一住所・同一商号の登記が禁止されています。

【商業登記法27条】
商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

現実的には、同じ所在場所・同じ社名というのはそうそうあることではありませんが、絶対ありえない、ということも言えませんので、やはり調査を省略することはできないと思います。

また、登記上問題なくても、近くに類似商号の会社があれば、新設会社に対してクレームを入れてきたり嫌がらせを受ける可能性もあります。

さらに、会社法・不正競争防止法で「不正目的での商号使用が禁止」されています。

【会社法8条1項】
何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
【同2項】前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

【不正競争防止法3条】
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
【同2項】
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

ということで、できるだけリスクをあぶり出し、お客さんの判断材料を提供するという意味でも、商号調査は必要だと思います。

3-2 事業目的

事業目的については以下の点が審査されますので、引っかかることがないように、お客さんが希望する事業内容の表現を考えていきます。

  • 適法性
  • 明確性
  • 営利性

重要なのは「明確性」です。目的の表現が日本語的に意味が分かるものでなくてはなりません。

以前に審査されていた「具体性」については現在は審査項目ではありませんが、取引相手に会社の内容を分かりやすく伝えるためにも、僕は神経質になりすぎない程度に、具体的な表現にするように心がけています。

僕は次の2冊を持っていますが、これらの本に掲載されている事例を参考にして、事業目的の表現を決めています。

ちょっと古い本で新品は手に入らないと思いますが、目的の審査が今より厳しかった時代の本です。幅広い分野の目的の例が掲載されており、とても参考になります。

こちらも新品では手に入らないようですが、ものすごい量の事例(事例部分だけで802ページ分)が掲載されています。

4 個人実印・会社実印の準備

商号調査も済み、お客さんが商号を決定したら、会社の印鑑を発注します。

僕はお客さんの代わりに印鑑を注文していますが、だいたい、柘(つげ)材か黒水牛(くろすいぎゅう)材の3本セットをお選びになられる感じです。

3本セットの内訳は、法務局に届け出る「代表印(通称:会社の実印)」、銀行に届け出る「銀行印」、会社の認め印となる「角印」です。サイズはお好みですが、僕は順に、18ミリ・18ミリ・21ミリをおすすめしています。

もし発起人・設立時取締役が個人の実印を持っていなければ、個人の実印も併せて発注します。実印が出来上がり次第、役所に登録に行ってもらい、次の通数の印鑑証明書を取ってきてもらいます。

  • 発起人:1人1通
  • 取締役:1人1通

発起人であり取締役にも就任する方は、印鑑証明書が2通必要です。発起人としての印鑑証明書は定款認証時に公証役場に提出し、取締役としての印鑑証明書は登記申請時に法務局に提出します。

5 定款原案についての打ち合わせ

お客さんとの打ち合わせを経て定款原案を作り、お客さんに説明・了承をもらったら、管轄の公証役場に原案を提出し提出して事前審査を受けます。

地元の公証役場や首都圏の公証役場と定款の打ち合わせをしたことがありますが、だいたい次の手順となります。

  1. 公証役場に電話し、電子定款認証を受けたい旨・これから原案をファックスする旨をお伝えします。
  2. 送付状・定款原案・委任状原案・発起人の印鑑証明書を公証役場にファックスします。
  3. 公証役場より連絡があり、補正箇所があればその旨の指摘を受けます。
  4. 補正の内容にもよりますが、大幅に修正する場合は修正済みの書類を再度ファックスします。
  5. 公証役場よりOKの連絡が来て内容の打ち合わせは完了です。
  6. 定款認証をしていただく日時(行政書士が公証役場に出頭する日時)について、公証人の先生の都合を聞いて予約します。日によって担当の先生が決まっている場合もあるので、担当の先生のお名前を聞いておきます。

打ち合せと言っても公証役場に出向くことはなく、ファックス電話でやり取りします。公証役場の書記さん(事務員さん)が対応してくださる場合もあれば、公証人の先生ご本人が直接対応してくださる場合もあります。

6 公証役場に提出する委任状への押印

定款案等の事前打ち合わせが終わったら、発起人から行政書士宛の委任状に個人の実印で押印してもらいます。

押印のやり方、委任状と定款の合綴のやり方については、後ほど写真をアップしたいと思います。

7 オンライン定款認証嘱託・定款認証

7-1 オンライン定款認証嘱託

委任状に押印をいただいたら、いよいよ法務省のオンラインシステムで電子定款の認証嘱託をします。

オンライン嘱託手続き自体は難しいものではなく、慣れれば5分で完了です。わかりやすいマニュアルも出ていますので、ご案内したいと思います。

ちなみに、僕は【スカイコムさんのSkyPDF】+【リーガルさんの電子認証キット】で電子定款を作っています。最安の組み合わせですが、まったく問題ありません。

7-2 定款認証

あらかじめ予約した日時に行政書士のみが公証役場に出向きます。次のものを持参してください。

  • 電子定款受け取り用のUSBメモリスティック又はCD-R(いずれか1つ)
  • 委任状+定款を合綴したもの(1通)
  • 発起人の印鑑証明書(各1通)
  • 行政書士証票のコピー(1通)
  • 同一の情報の提供を受けるため、定款をプリントアウトして左側2箇所をホチキス綴じしたもの(2通)
  • 現金(だいたい5万2000円くらい)

地元の公証役場の場合、行政書士証票のコピーについては表面のみでOKで、原本証明も不要です。ただ、遠隔地の公証役場に発起人に復代理で出向いていただく場合は、念のため表と裏のコピーに原本証明をつけています。ご自身で出向く場合は、念のため職印も持参すると良いと思います。(普通、持ち歩いていますかね。。)

8 資本金の払い込み

資本金の払い込みについては、定款認証が済んでから行っていただくよう、お客さんにお話しておきます。

よくお話しておかないと、定款認証前の早い段階に「もう振り込んでおいたよ!」みたいなことになって、やり直しの手間をお掛けすることになってしまいます。

払い込みの方法は次のとおりです。

  • 発起人の代表者(代表取締役になる人)
    自分名義の口座に「預け入れ」をします。「預け入れ」ですので、通帳には自分の名前は記載されません。
  • その他の発起人
    発起人代表者の口座に「振り込み」します。当然、振込手数料は「別途」とします。通帳には名前が記載されます。

払込先の口座については、既存のもので問題ありませんし、残高が残っていても問題ありません。ゆうちょ銀行も使えます。

9 各種書類の作成

払い込みが済んだら、設立の大詰め、次の書類を作ります。

  • 本店所在地決定書(発起人が1人の場合)・本店所在地決議書(発起人が複数の場合)
  • 取締役の就任承諾書(取締役全員分)
  • 払込証明書

10 司法書士さんとのやり取り

設立登記申請は司法書士さんの仕事ですので、司法書士さんに依頼します。

次の書類・情報を司法書士さんにお伝えすれば、準備を進めてくださると思います。

  • 定款
  • 本店所在場所
  • 代表取締役の住所
  • 設立日

司法書士さんは次の書類を作ってくださいます。

  • 登記申請の委任状
  • 登記申請書・登記すべき事項(電子申請なので、書類というより入力ですね)
  • 印鑑届書
  • 印鑑カード交付申請書

司法書士さんの書類ができあがり次第、お客さん・司法書士・行政書士の3者で打ち合わせを行います。(会社の代表印もこの段階ででき上がっている必要があります。)

その際に、9で作成した書類、そして司法書士さんが作成した書類に押印をいただきます。

この打ち合わせの際に、司法書士さんもお客さんの本人確認を行います。また、印鑑カード交付申請は設立が完了してからの手続きではありますが、この段階の日付で委任していただいて問題なかったです。

以上で設立前の打ち合わせはすべて完了となります。

11 法務局への設立登記申請

お客さんが指定した日に司法書士さんが設立登記申請を行ってくださいます。この日をもって会社が設立となります。

申請が済んだらお客さんに報告し、登記事項証明書(通称:登記簿謄本)が何通必要か確認しておきます。コピーして使ったり、原本提示後に返却してもらったりと使い回せば、最低限税務署に提出する1通のみでOKですが、お客さんの方で必要な場合もありますので、希望を聞いておきます。

法務局のHPに登記完了予定日が出ているので、完了予定日の前日頃から登記供託オンラインで謄本が請求できないかどうか申請してみます。

謄本が取得できれば、まもなく司法書士さんからも登記完了の連絡が来て、原本還付してもらった定款と印鑑カードを受け取りに行きます。

その間に、郵送で取り寄せておいた謄本も事務所に到着するよう段取り、一式をお客さんにお渡しして設立完了です。

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